ダウンアンダーから
ちょっとした小話を。
この正月、私の知人夫妻がオーストラリアにゆきました。そんなこともあり、最近よくかの地のことを思い出します。私も、4ヶ月間ほどクライミングトリップを豪にて8年ほど前しておりました。
お気に入りのエリアは、Mt.アラプリーズ。ここのエリアだけで100本以上のルートを登ってます。マルチも多いので、ピッチ数で数えると、かなりの本数になると思います。ただ、このエリアは、ナチュラルプロテクションを主体としたエリアです。終了点すらも自分でつくらなくてはいけないルートがほとんどでした。ボルトで打たれたルートに較べ、非常に1本のルートを登るのにも非常に緊張感を要します。ここでありとあらゆると言っても過言ではないほどクライミングの大事なのもを学びました。
登っているほとんどのクライマー達は、特別にクライミング能力が高いわけでもないのですが、その「緊張感」のあるアラプリーズのクライミング倫理をこよなく愛しそして実践し、それを誇りにしてました。
こんな話があります。私の好きなクライマーにアンディ・ポリットとというイギリスのクライマーがいます。英国にて「ハードグリット」なクライミングを実践していたクライマーの一人で、「ノッキン オン ヘブンズ ドア」という非常に危険なルートの初登もしてます。詳しくは、CJ50号を読んで見てください。
そのアンディも、豪にて非常に素晴らしいクライミングを展開してます。グランピアンズのタイパンウォールの厳しいルートのバリエーションや、「パンクス イン ザ ジム」の第6登など・・・枚挙にいとまがありません。
ここからあとは、私の友人から聞いた話なので、真実はどうかわからないのですが、好きな話なので書きます。
そのアンディが、アラプリーズで新ルートを開拓。そのルートがなんと、クラックの横にボルトを打ち込んだものらしい。そして、それが公になったとたんアラプリーズのキャンプ場の便所にこう落書きされたらしいです。
「ファッキン アンディ・ポリット」
要は彼は、この地をこよなく愛するローカル達から大バッシングくらったそうです。
この事件は、確か「岩雪」か「CJ」にも書かれた気がします(落書きの話じゃなくて、ボルトの話)。
トラッドのスタイルに精通した彼が何ゆえボルトを打ったかは定かではないですが、驚いたことは、実力と実績をもった彼に対して、彼がウォームアップにもならないようなルートを必死こいて登っているクライマー達が大抗議したことです。これっていいですよね~。日本では、逆な話はよく聞きますが・・・。要は、ホントはそのラインがボルトがないと登れない連中たちでも、ボルトがなくても登れる可能性があるんなら打つなって思ってんでしょうね。自分のクライミングの実力の物差しでなく、そのエリアやクライミング自体の物差しでものを考えているのでしょう。
ただ、勘違いしてもらいたくないのは、アラプリーズにも、ちゃんとボルトルートがあります。それなりにそれを必要とするルートにはしっかり、しかし最低限設けられてます。「パンクス」もそうだし「ロード オブ ザ リングス」もそうです。他、携帯ハンガーを使って登るルートなども多々あります。そして、ちゃんと感じなところに打ってくれてます。4~5mぐらいの高さの岩でマット敷いても登れるような岩に、ボルトを3,4本打ったりするようなことはありあません。
ようは、アンディのこのルートにボルトは「必要ないじゃん」だったのでしょう。そして、それに対して、きちんと主張できるローカル達。明文化さている訳ではないですが、ちゃんとした岩場のルールを持ちそれを誇りにして実践している。私が滞在していた際も、まだその気風が残っていて、ボルトを使って登っているクライマー達を、ちょっと小ばかにしてたのは、気に食わなかったけど、彼らはすごく素敵でした。
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